問い合わせへの返信は、**「受付の返信」は1時間以内、「中身のある返信」は当日中(遅くとも翌営業日の午前)**を目安にすると、取りこぼしが減ります。
先に正直に書くと、「何時間以内に返せば成約率がいくつ上がる」という、公的で信頼できる統計はありません。ここで書くのは、問い合わせを受ける側の実務として使いやすい目安です。数字を鵜呑みにせず、自分の事務所の数字で確かめてください(確かめ方は最後に書きます)。
なぜ、返信の速さが取りこぼしに関わるのか
士業への問い合わせは、多くの場合、相手が困っているときに出されます。手続きの期限が近い、従業員とトラブルになった、税務署から連絡が来た、といった状況です。
相手は、1つの事務所だけに連絡しているとは限りません。複数の事務所に同時に問い合わせて、先に連絡が来た事務所と、まず話してみるのは自然な行動です。理由は2つ考えられます。
- 困っている間は、早く答えてくれる事務所が安心に見える
- 返信が遅い事務所は、契約したあとの対応も遅いのではと心配される
つまり、返信の速さは、腕前とは別のところで、第一印象を決めています。
目安は「受付の返信」と「本返信」に分けて考える
「1時間以内に返さなければ」と考えると、所長が面談や書類作成で手が離せないときに、現実的でなくなります。そこで、返信を2つに分けます。
| 種類 | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| 受付の返信 | 受け取ったこと、いつまでに連絡するか | 1時間以内(自動でもよい) |
| 本返信 | 内容への回答、次にお願いしたいこと、面談の日程候補 | 当日中。遅くとも翌営業日の午前 |
受付の返信は、中身を考える必要がないので、自動にできます。問い合わせフォームに自動返信を設定するのが一番簡単です。これだけで、相手は「届いた」「いつ連絡が来る」と分かり、待つ間の不安が減ります。
本返信は、人が書きます。ここで、約束した時間を守ることが大切です。「翌営業日の午前中にご連絡します」と書いたなら、その時間までに必ず連絡します。早さそのものより、約束を守ることが、信頼につながります。
受付の返信の文例
◯◯様
このたびは、お問い合わせをいただき、ありがとうございます。◯◯事務所です。 下記の内容で受け付けました。担当者より、本日中(17時以降にいただいた場合は、翌営業日の午前中)にご連絡します。
■お問い合わせの内容 (フォームの内容をそのまま入れる)
お急ぎの場合は、お電話(03-◯◯◯◯-◯◯◯◯、平日9時〜18時)でもお受けしています。 ※このメールは自動で送信しています。
ポイントは3つです。
- いつ連絡するかを、具体的に書く。 「追ってご連絡します」だけだと、相手は待ち続けるしかありません。
- 受け付けた内容を控えとして入れる。 相手が「ちゃんと届いた」と確認できます。
- 急ぎの手段(電話)を1つだけ書く。 選択肢を増やしすぎません。
本返信の文例
◯◯様
お問い合わせをいただき、ありがとうございます。◯◯事務所の△△です。 ご相談の内容(◯◯の手続きについて)を確認しました。
結論から申し上げると、◯◯の対応は可能です。ただ、詳しい状況によって進め方が変わるため、30分ほどお話を伺えればと思います。
下記の日程で、ご都合のよいものはありますか。オンライン、または事務所での面談のどちらでも対応します。
・10月28日(水)10:00〜 ・10月29日(木)15:00〜 ・10月30日(金)11:00〜
事前に、◯◯の書類(なければ、ない旨のご連絡で構いません)をご用意いただけると、当日がスムーズです。 △△
本返信は、相手が「次に何をすればいいか」を一目で分かるようにします。質問を投げ返すだけにせず、面談の日程の候補を3つ出すと、返事がもらいやすくなります。
手が離せないときの現実的な運用
所長が1人の事務所で、1時間以内に本返信を出すのは難しいはずです。次のように、無理のない形を決めておきます。
- 自動返信を入れる。 受付の返信は、人手をかけずに出す。
- 1日2回、問い合わせを確認する時間を決める。 たとえば、昼休みと終業前。
- 夜間・休日の分は、翌営業日の朝一番に返す。 自動返信に、そのことを書いておく。
- 確認する人を決める。 所長が不在のときの代役(事務員など)を決めておく。
「いつ誰が見るか」が決まっていないと、問い合わせはメールの受信箱に埋もれます。取りこぼしの多くは、返信を後回しにしたのではなく、気づかなかったことで起きます。
自分の事務所の数字で確かめる
目安が合っているかは、自分の数字で確かめられます。1か月分の問い合わせを、次の3つだけ記録してください。
- 問い合わせを受け取った日時
- 最初に返信した日時
- 面談や契約に進んだかどうか
1か月分たまれば、「返信が早かった案件ほど、面談につながったか」が見えてきます。件数が少なければ、数か月分をまとめます。件数が少ないうちは、偶然の影響が大きいことも覚えておいてください。
自分の事務所の現状を手早く確かめたいときは、問い合わせの取りこぼし診断(10問・約2分・無料)が使えます。返信までの時間や追客の有無から、点数と、月あたりの推定額が出ます。
まとめ
- 返信は、「受付の返信(1時間以内、自動でよい)」と「本返信(当日中。遅くとも翌営業日の午前)」に分けて考える。
- 速さの数字は、公的な統計がない。目安として使い、自分の事務所の数字で確かめる。
- 返信の時間を約束し、守る。誰がいつ確認するかを決めておく。
次にやることは、問い合わせフォームに、受付の自動返信を設定することです。今日中にできる、一番効果の大きい手当てです。